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カンタータ第50番《いまや、われらの神の救いと力と》

バッハの教会カンタータ(52) BWV50

カンタータ第50番《いまや、われらの神の救いと力と》
Nun ist das Heil und die Kraft
1723, 9/29? 大天使ミカエルの祝日

さて、この大規模でかつ非常に短いカンタータについて何を言うべきでしょうか。 演奏の規模はトランペット3本、ティンパニ、オーボエ3本、二重合唱など、19段のスコアに書かれた堂々たるものです。一方、演奏時間は約3分30秒でカンタータ200番と並んで短いものです。そもそもこれはカンタータなのでしょうか?

大天使ミカエルの祝日のためのカンタータというのは歌詞からの類推です。あまり書くこともないので、その部分の聖書を引用しておきましょう。

7:さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、 8:勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。 9:この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。 10:わたしは、天で大きな声が次のように言うのを、聞いた。「今や、我々の神の救いと力と支配が現れた。神のメシアの権威が現れた。我々の兄弟たちを告発する者、/昼も夜も我々の神の御前で彼らを告発する者が、/投げ落とされたからである。 (新共同訳聖書よりヨハネの黙示録 / 12章 7節−10節

バッハのカンタータに何度も出てくる竜とミカエルの戦いの場面です。最後の「 」の部分がこの曲の歌詞になっています。 この曲が冒頭の合唱曲となり、2曲目以下は失われてしまったというわけです。 そこで、その推測が正しければ、1723年の当該作品が欠けているので、初演日もこうなるということです。 これ以外にも、他のカンタータの間奏曲として作曲されたのだとか、2本のトランペットやティンパニは後から付け加えられたもので、二重合唱も他者の編曲だとか、さまざまな説があります。

▼ということで、このカンタータは単一の合唱曲。音楽については、華やかで時にスリリングな合唱フーガ、それ以上あまり言うことがありません。(歌うの難しそう)。

▼華やかな演奏効果があり、合唱団の腕試しにもなりそうな曲のためか、録音はかなり多い方です。

   Prohaska		1957	VANGUARD  
   Harnoncourt		1975	TELDEC  
   Gardiner		1980	ERATO  
   Rotzsch		1981	EDEL  
   Rilling		1984	Hänssler  
   Parrot		1989	Virgin  
   Christophers	1990	Collins 
   Koopman		1997	ERATO  
   Suzuki		1999	BIS  
   Leusink		2000	Brilliant  

まずプロハスカ盤は半世紀も昔の演奏とは思えないぐらい端正な演奏で、感心しました。リリングの演奏も同様にバランスのとれたものでした。

コープマンの演奏は、非常に鮮やかでスリリングなものでした。しかし、一番面白く聞けたのはパロットの1パート1人の演奏で、この曲の複雑なスコアが目に見えるような、くっきりした演奏でした。

どのカンタータもこれぐらい短ければ、聞く方も楽なのですが。

(2003年8月17日)

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2003-08-17更新
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