BWV196「主は我らを御心に留めたまえり」
BWV71「神はいにしえよりわが王なり」


バッハの教会カンタータ (3) BWV196 & 71 (ミュールハウゼン3)
January 27, 2000

カンタータ第196番《主はわれらを御心に留めたまえり》BWV196
Der Herr denket an uns
1708, 6/ 5 結婚式

カンタータ第71番《神はいにしえよりわが王なり》BWV71
Gott ist mein König
1708, 2/ 4 市参事会交代式

▼BWV196と71は、1708年の作品とされています。ミュールハウゼン時代の作品と しては、あとBWV4「キリストは死の縄目につながれたり」という大作を残すのみ となりました。

▼解説書によれば、BWV196「主は我らを御心に留めたまえり」はマリア・バルバ ラのおばの結婚式のために書かれたと考えられています。相手は牧師さんで、 バッハとマリア・バルバラの結婚式を司式した人です。二人は、バッハの結婚式 で知り合ったのでしょうか、それとも二人がそういう仲だったから司式を頼んだ のでしょうか?
まあ、そんなことはどちらでもよろしいが。

音楽はさわやかな弦楽によるシンフォニアで始まります。しかし、この程度の曲 なら、何もバッハでなくてもという程度。第2曲の4重唱は古いマドリガルを思 わせます(歌う人は面白そうですが、聞く方はあまり面白くない)。3曲目のソ プラノアリアはヴァイオリンのオブリガートが美しく、なかなか魅力のある曲で す。4曲目のテノールとバスの二重唱、「子孫もいや栄え」などと、いかにもお じさんが型どおりのスピーチを長々とやっている感じ。最後の合唱、これもいか にも型どおりというか・・この曲について、解説書にはバッハのくつろいだ筆致 云々とありますが、まあ、あまり手を抜かないように。

▼BWV71「神はいにしえよりわが王なり」は市参事会員交代式のための作品で、 1708年2月4日に演奏されました。これは、当時評判が良かったのか、市参事会 員の費用で出版もされています。カンタータとしては、バッハ生前唯一の出版で した。ところで、結婚式や市参事会がなぜ教会カンタータなのか?やはり、教会 で行われたからでしょうね。

さて、音楽ですが、けたたましいトランペットで始まり、一瞬モーツアルトを思 わせるような部分があったり、何かと変な曲です。第2曲のアリア(コラール付 き)はオルガンのオブリガートがちょっと興味を惹きますが、第3曲の4重唱は いっそう古風なもの。そのあと、眠いアリアが続いたかと思うと、また、トラン ペットと太鼓が狂ったようにわめき立てるファンファーレが起こります。せっか くこたつでいい気持ちになっていたのに、飛び起きてしまいました。6曲目の合 唱曲だけは、なかなか感受性豊かなちょっと感傷的とさえ言える親しみやすい曲 で、途中の転調が何とも美しい。最終第7曲はまとまりのない、曲想のくるくる 変わる合唱曲で、ヨーゼフ皇帝を讃えたりしています。最後は一応決まったかと 思ったら、スカみたいなエコーが二三発かまされて、一気に脱力状態に。BWV106 もリコーダーのエコーで終わりましたが、これは当時の常套手段だったようで す。しかし、少なくともこの曲のエコーはやめた方がいい。

それにしても、バッハもよくまあこういうはちゃめちゃな曲を作ったものです。 しかし、それがまた好評だったというのだから・・仕事としてはうまくやったわ けですね。

まあ、バッハでもわりとしょーもない曲を作ることもあったんだなと思うと、か えって親しみが湧いてきます。初めから完成された芸術家など、いるはずもない のですから。

▼録音は、アルノンクールとコープマンを聞きました。BWV196は3曲目のソプラ ノアリアがとりえなのに、アルノンクール盤では少年の苦しげな声で、全然美し くない。バルバラ・シュリックの方が断然美しいです。BWV71はどちらでもよろ しいが、第2曲はコープマンのオルガンがなかなか雄弁です。アルノンクールの 方が、はちゃめちゃさはよく出ています。

▼解説書についてですが、CDに付属のもの以外に、もっぱら次の書籍に頼って います。この本がなかったら、今ほどバッハにのめり込むこともなかっただろう し、もちろんこんな企画は想像もできなかったでしょう。

「バッハ事典」 礒山 雅 他 編 東京書籍 1996  (今後単に「事典」と言えば、これを指すことにします。)

歌詞は、CDの対訳が頼りですが、ほとんどが輸入盤の上、やたらに古くさい英 語が多くて閉口します。聖書がそのまま歌詞として使用される場合も多いので、 以下を参考にしています。

文語訳聖書  日本聖書協会(文学的にも名訳と言われているもの)
教会讃美歌詩篇 日本基督教団(ルター作の讃美歌なども収録)
Holy Bible New International Version


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