カンタータ第63番《キリストの徒よ、この日を彫り刻め》バッハの教会カンタータ(18) BWV 63 (ワイマール時代13) カンタータ第63番《キリストの徒よ、この日を彫り刻め》BWV63
Christen, ätzet diesen Tag カンタータ第63番《キリストの徒よ、この日を彫り刻め》は、1714年、すなわちバッ ハがワイマールの宮廷楽師長に任命された年の、12月25日に演奏された曲です。クリ スマスにふさわしい、祝典的な合唱曲が両端にありますが、それにはさまれた5曲は 神秘的・内省的なものです。そういう点が、なかなか一筋縄ではいかない曲です。 ▼最初と最後の合唱曲は、共に、弦、金管、木管それぞれ大活躍の、華やかかつ大規 模な曲です。でも、ちょっと疲れるというか、くどいというか、もっちゃりしている というか・・・涼しくなってきてから、ちょっと聞けるようになりました。第1曲な ど、技巧の限りをつくしたという感じがします。第7曲は、素朴なところもあり、ま た、ミサ曲ロ短調の終曲"Dona nobis pacem"を思わせるような盛り上がりもあるので すが、何となくダサイのです。 第2曲レシタティーヴォ(A)、第3曲二重唱(SB)、第4曲レシタティーヴォ(T)、第5 曲二重唱(AT)、第6曲レシタティーヴォ(B) このように、ソロ歌手も総動員です。何しろぜいたくですね。曲想や、詩の内容から 考えると、2,3はいわば苦悩部、5,6は喜び部、第4曲がその転換部と言うこと になるのでしょう。第2曲の瞑想的、やがて法悦へと言う長々した語りを、弦が支え て、なかなかのもの。第3曲は、全曲中最も魅力のある曲と思います。オーボエのオ ブリガートがもの悲しく、両端声部の二重唱には、緊迫感があります。そして、第4 曲。勇者ダビデの弓は引き絞られ・・・と言うあたりからの、躍動的な表現が印象的 です。 そこまでは良いのですが、気分が和んでからの第5、6曲は、月並みな印象。全体と しては、力が入っているのは分かるが、どこかちぐはぐという感じの曲でした。 ▼演奏の方は、リヒター、アルノンクール、コープマン、鈴木といういつものメン バーの他に、フィリップ・ピケット盤がマニフィカト(変ホ長調の初期稿)との組み 合わせで出ています。 リヒターと、アルノンクールが違った意味で良かったです。アルノンクールの少年が とても上手。エディット・マティスよりも、この方が良かった。アルトも、ポール・ エスウッドの方が神秘的な迫力がありました。オリジナル楽器の金管も面白い。 ▼と言うわけで、次は、1年後の12月22日に演奏された、カンタータ第132番《道を 備え、大路を備えよ》BWV132です。ライプチヒまで、後一息。 (2000年9月18日執筆)
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